世界で唯一の古材仕上げが可能な「表面加工マシーン」
米国テネシー州コック郡ニューポートに拠点を置くアメリカの老舗ログハウスメーカーの新しい木材加工機の見学訪問を行いました。
Visit to the U.S. Hearthstone Headquarters for Fabricating Machines in 2024
2016年7月に発生した大規模火災により、ハースストーン本社の工場は全焼という壊滅的な被害を受けました。しかし、この困難を乗り越え、わずか約1年という短期間で、従来の施設をさらに進化させた最先端の工場として再建を果たしました。この新工場は約9,300平方メートルの広さを有し、効率性と革新性を兼ね備えた設備が導入されています。今回、その再建された工場を訪れ、世界で唯一のオールドログ仕上げを可能とした「表面加工マシーン」を見学する貴重な機会を得ました。
再建後の新工場では、生産能力のさらなる向上を目指し、従来よりも広い敷地に新たな大型プレカットマシーンと「表面加工マシーン」を加えた、計5台の木材加工機を導入しました。これにより、1日3シフト制で24時間フル稼働が可能となっています。
「表面加工マシーン」とは?
中でも、最も注目を集めたのが「表面加工マシーン」と呼ばれる画期的な機械です。この機械は、世界で唯一ハースストーン社が所有しており、新しいログをまるで200年前の古材のような風合いに仕上げることができます。その仕組みは、200年以上の歴史を持つ実際のログハウスで使用されていた木材を精密にスキャンし、その表面模様を忠実に再現するというものです。この技術によって加工されたログは、見た目のみならず質感においても古材そのものの風合いを再現しており、まるで時を超えたような仕上がりとなります。この革新的な技術は、伝統的なログハウスの魅力を現代に蘇らせる試みとして高く評価されています。
ハースストーンの目標であった「オールドログハウス造り」
ハースストーンは、1971年に米国テネシー州を拠点として創業しました。当初はアパラチア山脈南部において、ダブテイルログハウスやティンバーフレームといった古い角ログハウスの修復事業を中心に活動していました。しかし、歴史あるログハウスで暮らしたいという多くの人々の願いに対し、現存するログハウスの数が需要に追いつかない状況でした。
そこでハースストーンは、移築や修復で培った豊富な経験を活かし、新築のログハウス建設へと事業をシフトしました。角ログ造りにおいては、最新のプレカットマシーンを活用してノッチやほぞ継ぎ加工を施した精巧なログ材を製造し、さらに手斧による「ハンドヒューン表面加工」を加えることで、当時のオールドログハウスを忠実に再現してきました。
しかし、熟練職人による手作業には限界があり、この課題を解決するため、機械製造メーカーと協力して「表面加工マシーン」の開発に取り掛かり、見事に新しいログを古材風に仕上げる機械加工に成功しました。これにより、200年以上前に建てられたダブテイルログハウスやティンバーフレームが持つ、風化したアンティークな趣をより効率的かつ精巧に再現することが可能となりました。