ハースストーン見学会 – ジャイルズ本邸 in ダンドリッジ テネシー州 2024年
米国テネシー州ジェファーソン郡ダンドリッジ湖畔に建つダブテイルログハウスの見学を行いました。
Hearthstone Field Trip to Giles House in 2024

テネシー州東部に位置するダグラス湖は、フレンチブロード川に建設されたダムによって形成された広大な貯水湖で、美しい山々に囲まれた自然豊かな環境の中で、ボート遊びや釣り、水上スポーツなどのアウトドアアクティビティが楽しめるだけでなく、その豊かな生態系や季節ごとに異なる絶景が訪れる人々に感動を与える、地域で人気の観光地となっています。
そんな美しい湖畔の土地を40年以上前に購入したハースストーンホームのCEOであるランディ・ジャイルズ氏が建てた本邸のダブテイルログハウスを見学させていただきました。


約25年以上前に建てられたこのダブテイルログハウスは、アメリカ植民地時代に建てられた、さまざまなサイズの湾曲したログを使ったオールドログハウスをモチーフにした「ティンバーレイク仕様」が採用されています。その中でも特に、ハンドヒューン表面加工を施した大径材を採用することで、角ログハウスの中でも最も丸太ログハウスに近い重厚感と自然な質感を兼ね備えた、独特の存在感を放つ木造建築物となっています。


ジャイルズ本邸で使用されているログ材は、幅60cmを超えるものも含まれており、その圧倒的な存在感と迫力が建物全体に野趣あふれる雰囲気を与えています。このログ材が持つ重厚な印象は、自然と調和した力強いデザインを際立たせ、訪れる人々を魅了しています。
さらに、リビングの象徴とも言える暖炉には独特な特徴が見られます。一般的な暖炉とは異なり、炉室内は通常よりも高さが確保されている一方で、奥行きと幅が抑えられた設計となっています。その結果、この暖炉は従来の暖炉というより、まるで屋外で楽しむ焚火に近い仕様となっており、室内でも焚火の温もりや雰囲気を味わえるよう工夫されています。このデザインには二つの大きな目的があります。一つは、外で直火の焚火を楽しむような自然な体験を室内でも再現すること。もう一つは、焚火から放出される熱を効率的に室内全体に行き渡らせるため、熱効率を高めた構造を採用している点です。
この暖炉の設計は、野性味あふれる心地よさと機能性を見事に融合させたものと言えますが、その反面取り扱いにより注意が必要となるので、誰にでもお勧めできるスタイルではありません。
この暖炉の設計は、自然の魅力を感じさせる野性味あふれる心地よさと、実用性を兼ね備えた非常に独創的なものであり、空間に独特の魅力をもたらしています。

実験や新しい挑戦に目がないランディ氏は、自身の住まいとして初めて建設した敷地面積40㎡のログハウス「旧ジャイルズ邸」において、「小さく建てて小さく住む」というコンセプトを掲げました。このログハウスは、限られた空間であっても快適に生活できることを示すための実験的な取り組みでした。ランディ氏は、自らこの住まいに身を置き、そのコンセプトを実践することで、小さなログハウスでも充実した生活が可能であることを証明しました。
この本邸においても、ランディ氏の実験的な試みは続けられました。その内容は、ログ材に対するメンテナンス、具体的にはステイン塗装や防腐・防虫プロテクションを行わなかった場合、ログ材がどのような変化を遂げるのかを検証するものでした。新築時に施されたステイン塗装を最後に、ログ材を保護するための定期的なメンテナンスは一切行われず、そのまま経年変化を観察するという大胆な取り組みが行われたのです。
結果として、新築から25年以上が経過した現在に至るまで、構造材としてのログに修繕を要する箇所が生じることはありませんでした。この結果が得られた理由には、気象条件や環境の影響も関係していると思いますが、テネシー州の気候は日本の関東地方から中国地方にかけての気候と似ているため、同じような結果が得られた可能性は考えられます。
しかし、この結果は、単なる偶然や環境条件だけによるものではなく、ランディ氏が「低メンテナンスなログハウス」を実現するために施したさまざまな工夫と対策が大きく寄与したものと考えられます。適切な設計と施工技術、そしてログ材そのものの品質が相まって、このような長期にわたる耐久性とメンテナンスフリーの実現につながったと考えられます。