ハースストーン見学会 – 旧ジャイルズ邸 in ダンドリッジ テネシー州 2024年
米国テネシー州ジェファーソン郡ダンドリッジに建つダブテイルログハウスの見学を行いました。
Hearthstone Field Trip to Giles Guest House in 2024
テネシー州東部に位置する美しい人造湖「ダグラス湖」の湖畔に佇む、築40年のダブテイルログハウスを見学いたしました。このログハウスは、アメリカの老舗ログハウスメーカーであるハースストーンホーム社のCEO、ランディ・ジャイルズ氏が自身の住居として初めて手がけたものです(現在はゲストハウスとして使用)。建築面積は約40平方メートルと、コンパクトながらも洗練されたデザインが魅力的で、長い年月を経てもなお、その独特の風格と温かみのある趣を保っています。
「小さく建てて小さく暮らす」がテーマ
ランディ氏は、「小さな家でも快適に暮らすことは十分可能である」という考えを実証するため、自身の住居を舞台に実験的な生活を送りました。そこでは、4人の子どもたちを育てながら、家族全員で15年間にわたり「小さく暮らす」というライフスタイルを実践したのです。この取り組みは、限られた空間の中でいかに快適さと実用性を両立させるかを追求し、家族の絆や生活の在り方を示す象徴的な例となりました。
暖炉の暖房効率
彼の取り組みはこれにとどまらず、更なる実験的挑戦へと続きます。彼は、一般的に薪ストーブと比較して暖房効率が劣るとされる暖炉の熱を、いかにして最大限活用できるかを探求しました。
取り組みの第一歩としてまず初めに、石造りの暖炉を建物の中心に配置することで、暖かさが家全体に効率よく行き渡るよう工夫しました。さらに、暖炉の内部排気口には、熱を効率的に蓄積するために工夫された角度を持たせると同時に、煤が溜まりにくい構造を採用しています。また、二重断熱煙突を使用することで熱損失を最小限に抑え、燃焼効率を飛躍的に向上させる仕組みを取り入れました。これらの工夫は、暖炉を単なる鑑賞用としてだけでなく、家全体のエネルギー効率(暖房効率)を高める重要な要素として位置づけた、彼の独創的な取り組みの一環といえます。
ログ壁の経年劣化の実験
新しい挑戦や実験を好むランディ氏は、ログ材を使用した建物がメンテナンスを行わない場合にどのような状態になるのかを観察するため、独自の試みを行いました。具体的には、角ログハウスが完成して数年後、一度だけ防腐・防カビ・防虫スプレーの処理とステイン塗装を施した後、それ以降は一切のメンテナンスを行わずに経過を見守ることにしたのです。以下の写真は、35年以上もの間、メンテナンスを行わなかったログ壁の状態を示しています。
左側の写真に写るログ壁は、建物の南東側に位置するコーナー部分です。この部分は、上部に雨や紫外線を防ぐ庇がないため、右側の写真にある北西側のコーナー部分と比べて、劣化が著しいことがわかります。一方で、北西側のコーナー部分にはバックポーチの屋根があり、雨や直射日光にさらされる時間が南東側と比べて少なかったため、劣化が緩やかであると考えられます。このような環境条件の違いが、ログ材の劣化に大きな影響を与えていることが分かりました。